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2011/05/31

【MtG:StF私家訳】キスキンの書

(記事掲載直後に3つの話が抜けているというご指摘を受け、6/1に補完いたしました。確認不足をお詫びいたします。)

今回はローウィン・ブロックのキスキンたちの本であります

The Book of Kith and Kin
Savor the Flavor: by.Doug Beyer 2007年11月7日
http://www.wizards.com/Magic/Magazine/Article.aspx?x=mtgcom/daily/db9

を訳出します。
原文は掌編がランダムで表示されますので、おそらく全種類確認したと思いますがもし抜けがあった場合はご一報ください。

あくまで英語力の低い筆者の勉強として訳してますので全くの誤訳や勘違いなども存在する可能性があります。もし見つけられた方はご教示くださると嬉しく思います。


(訳ここから)

キスキンの書

 キスキンの子供たちは彼らの一番幼い頃の思い出としてキスキンの書のお話を覚えていて、キスキンの長上たちは死ぬその日までそれを引用する。キスキンの書は、知恵のかけら、短い物語、伝説、お役立ちな忠告、格言、ならびに迷信を一緒くたにまとめたキスキンによるキスキンのための一種のキスキンの手引書なんだ。君のようなプレインズウォーカーにとっては幸いなことに、この本の一冊がケファライの市場で見かけられたので、無作為にそのページをめくって何を書かれているか読む機会が君にはある。


ボガートに咬まれた跡の特徴と手当てについて

 ボガートの歯には魔法がかかっています。ボガートたちの多くは原始的な棍棒、スリング、または刃のついた武器(ブレンタンの炉から盗まれた短剣など)で戦います。しかし武器を取り上げられて窮地に追いこまれると、ボガートは死に物狂いになって自分の生まれながらの武器である鉤爪や呪われた歯を使うでしょう。キスキンの肉はそのひと噛みで腐り落ちてしまうので、その損傷を治すには特別な介抱が必要となります。

 一本の成熟した楓の木の北側から十一個の緑の種翼を選り出しましょう。それを二つの石の間で繊維状のペーストになるまで擂り潰して、それを苦しむキスキンのハンカチで絞りましょう。このようにして得られた汁を咬み傷に直接塗りこんで、次の夕暮れも、また次の夕暮れも繰り返しましょう。そうすればようやくボガートの歯の呪いは解けるでしょう。


家族、家、そして民兵団

 いくつかの小村は守備軍として騎士と兵士の地位を堅持しますが、殆どの村は外敵から自分たちを守るのに農民民兵団を頼みにします。ローウィンの多くの他の種族やクリーチャーたちとの単身での戦いでキスキンが圧倒出来るのは、農民民兵団を裏打ちするもっとも重要な原理である全員同心です。誰か一人のどんな躊躇も小村の守備の穴となります。思考の糸が一人のキスキンの心に危機を伝えるとき、彼女はもう非戦闘員ではなく兵士の一門の一端です。


勇ましい短刀挑み

 「死よ、まずは我に訪れよ」というのは、同胞を守るために命を捧げたキスキンである短刀挑みの格言です。短刀挑みは思考の糸を使って攻撃の物理的、精神的、情緒的状態を探知し、彼らの攻撃とあらゆる危険の間を邪魔する者に即座に対応します。昨今はほとんどの短刀挑みが両手に幅広のブロンズの短剣を使います。彼らが危難に直面したとき、それが最も役に立つと考えているためです。しかしながら時代は過ぎ去り、彼らは同じ目的のために大きな盾を使います。


主の剣

 鐘塔が崩れた頃のダンドゥーリン(Dundoolin)の主はドランナ・グワル(Daranna Gwal)でした。ドランナは小村の誉れ高き指導者にして、記憶される中ではもっとも評判の良い剣の名手でした。しかしある時、彼女は戦いの怪我によって倒れ、狂乱したボガートたちは彼女を通りすぎて愛されし鐘塔を破壊しに行きました。彼女は巣穴の婆を討ち取ったものの、指導者としての誇りを失いました。病床の中で彼女はハイヤル・ルウェレン(Hyal Lwellen)を跡継ぎに指名し、彼女の大切な剣を彼に遺してすぐ後に死にました。

 ハイヤルはドランナの剣をとり、ダンドゥーリンの主の役割を引き受けて、全ての中で最も名高い主の一人となりました。彼の在位中の行いの中には、鐘塔を再建し、紙ひれのメロウたちと取引の休日を制定し、そして精霊の研究に専念する最初の学校を設立したという事があります。しかし、ハイヤルの最も評判高い行為は、ボガートの巣穴を侵攻するために使われた民兵団であるダンドゥーリン略奪隊を解散させたことでした。


スプリングジャックの美徳と式典

 スプリングジャックは神代の昔より選り抜きの私たちの乗用馬、私たちの荷負い馬、私たちの毛糸や乳および肉の源、そして私たちの種族の忠実な友です。すべてのキスキンは年に一度のスプリングジャック祭りにおいてこの荘厳な獣の貢献に栄誉を与えます。祭りは最も逞しいキスキンが絶え間なく増え続けるスプリングジャックの重さを持ち上げようとする競争で始まります。それぞれのキスキンたちのジャックマン魂を試されることとなる、喜ばしい覚悟を人々に見せる馬上試合があります。最後にはスプリングジャックの踊りがあります。その活気があって身を捻るダンスは、初めにスプリングジャックを飼い慣らしたキスキンであるタルビン・ビール(Talbin Beel)の物語を象徴しています。


巨人の交友

 巨人の不幸は彼の頭の固さです。あるものは、それを彼らの思考の寸法のせいだと信じています。巨人は自分の頭に一度にひとつ分だけしか収まらないくらいに大きな思考を持つということです。私たちキスキンは多くの種族たちが思考の糸の共同的意識を欠いていることを理解しているにも関わらず、巨人の孤立した思考の遅い循環の有り様は、特に恐ろしく思えます。しかしながら、この事は巨人たちが強力な味方であるということを否定しません。巨人が一人のキスキンに執着する時、巨人がうっとりしている状態が色褪せるまでの数週間くらいは、それが続いている間は利用出来ます。一般的に巨人の同志愛の恩恵は、彼らとの交際の危険を大いに上回ります。


太陽と投げ石

 私たちの世界の一日の終りに、太陽は弧を描いて西の地平線に触れます。私たちが眠るころ、薄闇の太陽は遠くの山の畝に沿ってゆったり歩き、東の地平線へと回って巡ります。朝になった時、それは再び登っていっぱいの夜明けの光をもたらします。

 その時の東の地平線は大切な魔法を持っています。木の夜明けの側から果実を選別して、治癒力をもつジャムをつくりましょう。特上の弾力を持つ糸を紡ぐために、夜明けの光に向いたスプリングジャックから毛を集めましょう。最も速く遠くまで飛ぶ弾にするために川の夜明けの側から投石器のための石を選びましょう。


錬金術師の輪

 どのキスキンの錬金術師も言うように円陣は力の形象です。それは目の中心、ツリーフォークの心材の同心のパターン、そしてもちろん太陽の円盤の形です。妖精たちは花や毒キノコの輪のような円陣の形象に惹きつけられます。そして、円陣はキスキンの粉魔法の鍵なのです。

 収穫を奮い起こす林檎の種の粉の円陣を、川で豊かな獲物を請け合うヒゲエラの骨を挽いたものの円陣を使いましょう。錬金術の達人は、ただ楓糖の円陣だけで何日も囚人を追い詰めて捉えておくことのできる拘束力の輪を組み上げることが出来ます。最も神聖な円陣は小村の輪であり、その力の下ではどんなキスキンの村も破壊されることはないでしょう。


収穫祭のリボン裂き

 昔、二人の若いキスキンの兄弟が沼地をじっと見つめては何故この水域はこのように濁っていて静かなのかを見つけようとしました。彼らが見た時、絶対的畏怖の精霊が見返してきて悪をもってして彼らの心に触れました。それ以来一年と一日の間、兄弟は闇の触手が彼らの魂に巻きつくのを夢に見て、それは彼らの精神を縛って思考の糸の感覚を無力にしました。そして、収穫祭の祝日に賢明なるクレリックのハリック・ティーグ(Harrick Teeg)は呪文を破りました。彼は魔法をかけられた布のリボンを兄弟に巻きつけて、それを裂いて、恐ろしい夢から兄弟を解き放ちました。

 これがなぜ私たちキスキンが収穫祭でリボンを裂くかということです。


チドリとその装具について

 チドリは丈夫で勇猛な獣ですが、御し難い時があります。チドリに装具をつけるときは、それに逆らう鳥のこだわりを利用してください。皮を向いた瓜(特にビターベリーのジャムで覆われたもの)を使って注意を引きつけて、それを食べている間に鞍を背中に取り付けて胸の下でしっかりとバックルで留めてください。瓜の欠片を飲みこんでいる間に端綱を嘴の下にかけてそれを輪にします。スプリングジャックの鞍と違って、千鳥の鞍は鐙がありません。あなたのチドリの従者の仕事は、その座部にあなたの重みを導くことです。もしあなたに従者がいないのなら、鞍に乗る助けとして長槍を使えます。杖のように下へそれを押して、そして手前側のブーツを腰部の頑丈な羽に突き立てて、そして鳥の反対側から手綱を引いてください。あなたはあっという間に鞍の上にいることでしょう。


正しい風船使いの道

 風は空を通る大気の道を切り開き、風船使いはそこを散策するキスキンです。しかしその道は瞬時に変わり、鋭く進路を変えたり予告なしに順路を逆にしたりします。よって風船使いは必ず繋索をしっかりと手で握って、飛行船を誘導しなければなりません。かつて偉大なる詩人ワイナラット(Wynnarat)は風船使いを「小村の目」と呼びました。風船使いの監視なしでは思考の糸は巨人や気の立った精霊のようなものからの略奪の危機に気付かないでしょう。風船使いの大気における特権は、彼の技能の基と義務の元の双方からきています。


ブレンタンの炉の炎

 かつて偉大なる詩人ワイナラットはブレンタンの灯を掻き立てる必要は一度もないと言いました。彼女の言葉は正しく、石炭を掻き立てるキスキンの硬くなった手のあるなしに関わらず、ブレンタンの偉大なる鍛造炉は絶えず熱で渦巻いています。しかし炉は絶え間ない燃料の供給を必要とします。長上の最も早期の思い出にこじつけられた炉の世話人の習わしでは、倒れた柏と樺の木材を境界森から刈り入れて、背骨岩の小山の小石をまぶします。小山の魔法は打ち消し難く、恒久的に燃料を与え、熱を一貫させますが、長上はいっぺんに多く入れすぎないように警告します。


精霊たちとその前兆

 精霊の振る舞いを研究をするものは世界の営みを学びます。ダンドゥーリンのキスキンの賢者は何世代にも渡って八十折要訣(Eightyfold Trail)と呼ばれる絵入りの写本に精霊の前兆を記録しています。要訣は80の異なる種の精霊を記述した目録であり、彼らの所作の意味を明らかにします。

 八十折要訣の最も有名な一節は月の石と呼ばれる物に関わるもので、それは荒野で精霊を研究する時にキスキンの占いを助けると言われています。しかしその記述に沿った物は全く見つかっていません。それはもう存在しないのか、その術語は要訣の以前の写しからの誤写なのかもしれません。


ブランハルドとツキノテブクロの乙女

 ゴールドメドウのブランハルド(Branhald)は自然から霊感を得ていた画家でした。彼は花粉入りの練り物できめ細かな乳白蛾のキャンバスに絵を描きました。ある日、ブランハルドは彼の傑作の題材を求めて森の奥深くにまで険を冒し、今までに見た中で一番美しい女性に突然出くわしました。彼女はエルフで、並々ならぬ美の産物であり、ブランハルドは己の傑作にとって彼女は完璧だと確信しました。しかしながら、彼が彼女を描ける前に遠くへ走って行きました。彼は悲嘆に暮れました。

 ブランハルドはエルフの女性を何日も探し求めて、彼が最初に彼女を目にした森を駆けまわりました。やっと彼女に辿り着いた時、彼女は液体の入った小瓶を持っていて、この中身を使うことによってのみ私の絵を描く事ができると彼に告げました。彼は彼女の願いを聞いてそのかんばせを元に傑作を創りだしました。しかし、それを仕上げてすぐさまに急死しました。その絵はツキノテブクロの乙女と呼ばれ、キンズベイルで見ることが出来ます。そして今日ではエルフの毒はツキノテブクロとして知られています。


メドウグレインの騎士

 一年に一度、それぞれの小村が送り出す最も立派な騎士たちはメドウグレインの芝で会合し、キンズベイルから清められた開拓地に半日の乗馬をします。有望な者たちは彼らの武勇、戦闘における優美さ、そしてジャックマン魂を示すための一連の試練に取り組みます。競争の勝者はキンズベイルの騎士の指南を受け、キスキンの騎士たちの命令を世界の何よりも尊重しました。

 メドウグレインの騎士には無口であるという世評がありますが、これは本当ではありません。しかし、闘いや偉大なる私的勝利の後にはしばらく話さないのは、彼らの誉れ高くして勇敢なる行動こそが何よりも彼ら自身を物語るという信条を重視する騎士の慣わしからです。ブレンタンの最初の主はそのような騎士であり、最初の二週間は頷きと身振りだけで小村を率いました。


世界を造るフレイバー・テキスト:場所の観念を造り上げる

 やあ!ダグだよ。君はこの記事の小さな本に潜む小さな秘密の記事を発見したね。もし君がキスキンの書を楽しんでくれたのなら、素晴らしい――すぐにまたとって返して君はフレイバーに浸るだろうね。だが、君がここにいる間に、ローウィンのキスキンのフレイバー・テキストがどのように生まれたかについてちょっと話したいと思う。

 ここには多くのタイプのフレイバー・テキストがある――簡潔な観察記録、当意即妙の洒落、無味乾燥な百科事典の事項、野次の引用、ひどい駄洒落、そしてその他多くのものがね。でもマジックのセットで最もクリエイティブに働くタイプのフレイバー・テキストは、僕が世界を造るフレイバー・テキストと呼ぶものだ。この種のものはスタイルガイドの設定にいる存在の詳細を詳述し、君をこの背景世界にいると感じさせてくれる。

 世界を造るフレイバー・テキストにはユニークな役目があるんだ。それは物語を語っているわけではないが、物語を語ることと多くの特性を共有している。フィクションの文章であること、度々キャラクターたちの台詞または対話があること、そして直ぐさま確実に判らせることが出来ること。でも物語には始まり、中頃、そして終わりがある。フレイバー・テキストはせいぜいカード上の数行なので、物語全体を伝える余地はない。だから何だって言うんだい?

 僕がよく人々に言うには、世界を造るフレイバー・テキストとはその場所の観念を生み出す文字によるスナップ写真ということなんだ。「スナップ写真」という言葉は多くの状況や長期に渡って続く行動を描写しようとしないということも仄めかすけれど、むしろそれはある瞬間の体験や感情を捉えている。「場所の観念」というフレーズが意味するのは、読者をカードによって表現されたクリーチャー、呪文、物、そして位置が属する世界に入れることなんだ(この種のフレイバー・テキストはマジックのカード上でうまくいっている、なぜならそれはカードのアートによく目標を合わせているからだ。また、マジックのアートは設定とその住人を表現するようにデザインされた特定の時間と場所のスナップショットだ。これらは共に君の想像がゲーム・クリエイターのものと同調するように尽力している。僕達がみんな同じ世界の登場人物であるようにね)。

 世界を造るフレイバー・テキストを書くのはきつい仕事だ。今日、君はそれに取り掛かる思考過程の類を見ている。キスキンの書の各「ページ」は世界を造るフレイバー・テキストの1つの断章やスタイル・ガイドの破片の背後にある思考過程の1つの推察だ。 僕はこれらの推察を書いたけれど、このアイデアは僕だけのものじゃない。クレジットにはローウィンのフレイバー・テキスト作家たちとローウィン・スタイル・ガイドに貢献した世界設定作家たちがいる。今日その本にざっと目を通した時、君は彼らの舞台裏での努力と、ローウィンとそこに生きるキスキンの場所の観念を生み出すために彼らがどう働いたかについてちょっと考えるかもしれないね。

キスキン・ウィークを楽しんでくれ!

(訳ここまで)

この文章は大変興味深いのですが、ローウィンの用語やこの記事のみの固有名詞も多いために調べるのに時間がかかりました。ローウィンのことについては殆ど知りませんでしたので、新しい知識を身につける機会となってなかなか楽しく、しかし苦しくといった感じでした。
伝承の書っぽく少し妙な日本語で訳してみましたが、ただの変な文章になっただけの気もします(ノ∀`)

とりあえず、リボン裂きのおはなしに登場するクレリックのハリック・ティーグは《ガドック・ティーグ/Gaddock Teeg》の関係者なのでしょうかね。

3 件のコメント:

  1. 元記事も見ましたがこれは大変だ。お疲れさまです。

    誤訳ではないのですが、

    エンチャントされた→魔法のかかった

    の方がいいかな、と思いました。「エンチャント」という言葉はあまりに「マジックの実際のゲーム」を思い起こさせる気がしまして。

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  2. これは大作ですね。
    元記事自体がずっと以前に失われていたものなのですが、復活していたのですね。
    貴重な資料の紹介ご苦労様です。

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  3. >あいしゃ様
    本当にありがとうございました、助かりました。
    面倒がらずに最初から.jsを直接確認すればよかった話ですね…。

    補完のついでと言っては何ですが、ご指摘の部分もコッソリ書き換えてみましたり。
    背景世界とゲームは密接なかかわりがあるとは言え、確かにこれは直接的すぎました。

    >あらーら様
    詳しい経緯は判りませんが、今はリンク切れって言われてたのをググってみたら普通にありましたのでちょこちょこ訳してました。
    一話一話が短いからすぐ終わると思ってましたら数が多かったという…(ノ∀`)

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