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2013/01/05

【MTG:背景小説私家訳】Return to Ravnica: The Secretist, Part One サンプルチャプターその1

今回は、ラヴニカへの回帰小説である「The Secretest Part One」(日本のKindleストアではこちら)のサンプルチャプター

Return to Ravnica: The Secretist, Part One
http://media.wizards.com/images/magic/merchandise/ebooks/The_Secretist_Part1_CH1.pdf

を訳出します。

サンプルですがそこそこ長いので、段落ごとに数回に分けて掲載していきます。
あくまで英語力の低い筆者の勉強として訳してますので全くの誤訳や勘違いなども存在する可能性があります。もし見つけられた方はご教示くださると嬉しく思います。




The Secretist(秘密主義者)


扉を叩く

 ジェイス・ベレレンは一枚の羊皮紙を持って窓に向かった。ラヴニカの第十地区の高い塔の間に縮こまっている建物は地上からほんの数階しかなかったが、冷たい夕方の光がガラスを通して煉瓦と石に跳ね返った。インクの滲みと彼独自の魔道士印を押されたその羊皮紙は、彼が発見した暗号についてびっしりと記録されていた。その筆跡は近頃見るに――次第に正気を失っていくようになっていった。書斎の壁にはこのような文書が一面に貼り付けられていた。ジェイスは最後にいつ髪を洗ったか、いつ一晩ぐっすり眠ったのか訝しんだ。ジェイスは彼がもう目を開けていられなくなった時だけ眠り近所の市場や行商人の所にさえ出歩かないということに、もう一人の研究者であるカヴィンという名のヴィダルケンの男が気が付かないことを願った。ジェイスのベッドは積み上げられた記録の山であり、家具は第十地区から集められた壊れた建築物の奇妙な破片、そして主な栄養源は囓った万年筆の端っこだった。

 その発見――ジェイスが現在夢中になっているもの――は徐々に明らかになっていた。最初にそれを見た時には、彼はまだそれを暗号とは判らなかったどころかこの地区周辺で何度もそれが現れるまでどんな関連性も全く認識していなかった。

 最初の時、彼は危うくそれに蹴つまづく所だった。イゼットのギルド魔道士の集団が道路から敷石の層を掘り出しているのを見かけるのは、別に珍しいことでもなかった。そのギルドは都市の多くの魔法的社会基盤の維持管理を課せられており、たまたま通りすがったジェイスはただ彼らの仕事に見向きもしなかった。しかしイゼット魔道士達が縁石から古代の石の塊を取り除いて、露出した蒸気管とエレメンタル導管に骨を折っていた時、ジェイスは放り出された石の欠片の裏側に模様が刻まれていることに気がついた。それは経年によって摩耗しており半分が蜘蛛の巣で覆われていたが、ジェイスは幾何学上に正確な括弧の行列のような彫刻された印がそこに並んでいるのを見てとった。

石造物の裏側や通りからはまず見えないだろう側面に模様を刻むような手間がかけられていたことは、ふとジェイスの好奇心を引いた。しかし、新しい形の暗号を再発見するまで彼はそれを再考することもなかった。ある第十地区近辺の古くてぼろぼろにされた場所が掘り出されていた。ある日、ジェイスはパチパチ音を立てるミジウム製篭手を身に着けた逞しいサイクロプスが織物工場の残骸を取り壊しているのを立ち止まって眺めた。サイクロプスは石の大きな厚板を持ち上げて瓦礫の山に放り投げ、おそらくはイゼットの何らかの新しい実験のための場所を空けていた。ジェイスは処分されていた石に連続した三角形が彫られているのを見た。

 ジェイスはそれを暗号と認識するや、彼の腹心にして共同研究者のカヴィン――幾何学模様の多様な例を追跡調査する大いなる助けとなり、拓本を採り、それらが目撃された位置を地図に記し、そして時折はジェイスのためにギルドの制限領域に忍び込んでさらなる暗号の破片を採って来る事を引き受けた者――にその詳細を隠していた。カヴィンは論理的で実務的な男だった――強迫的な衝動にふけりがちではない。もしジェイスがこの暗号がどれだけ彼の顕在意識のあらゆる瞬間にまで取り憑いているかを漏らしたならば、カヴィンはこの研究計画を放棄するだろう。

 ジェイスの目は刺すように痛んだ。ほんの一瞬、彼はぎゅっと瞼を閉じてから擦った。彼らは多くの標本を持っていたが、答えは無かった。欠片は上手く嵌らなかった。それらには規則性やパターンはあるが、配列は無く、意味も無かった。何かが欠けていた。

 下の階のドアがノックされた。


(その2に続く)


ジェイスの腹心にして共同研究者であるヴィダルケンのKavinはケイヴィンなのかカヴィンなのかカーヴィンなのかわかりませんが、タミル系の名前としての読み方であるカヴィンとしておきました。彼が何者なのかは読み進めていくとわかりますが、その判らせ方といいますか確証のもたせ方がもう何とも…ね。

この作品は外部の小説家ではなく制作に関わったDoug Beyer氏が自ら執筆しているだけあって、カードのフレーバーにも密接に繋がっており、多くのレジェンドも登場します。文章自体もそこまで難しくもなく、ひとつの段落も短めですので是非とも原文を購入して読んでいただきたいです。


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