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2011/05/07

【MtG二次創作:SS】ドミニア英雄偽譚~滞納者ヴェンセール編~

全てのカードには物語が秘められている……のかもしれない
ドミニア英雄偽譚~滞納者ヴェンセール編~

 マジック:ザ・ギャザリングの歴史はとても長く、新参の筆者はあまり把握できておりませんので勘違いしている箇所がありましたらお詫び申し上げます。

 当記事では、筆者が知ってる範囲での伝説のクリーチャー達や新世代プレインズウォーカー達に焦点を当て、各種ネタバレも含めながら彼らにまつわる馬鹿馬鹿しい冗談と妄想について紹介していきますので閲覧にはご注意ください。



■《滞納者ヴェンセール》

 ドミナリアのジャムーラ大陸北西に位置する炎熱の島々と呼ばれる島のひとつ、アーボーグ。そこは夜魔が跳梁する危険な島であり、かつては豹頭のプレインズウォーカーである英雄ウィンドグレイス卿の出身地として知られた場所でした。

 そこに一人の才能溢れる工匠の男が住んでいました。温和で素直な心を持つ人間である彼の名前はヴェンセール、大修復の後に灯を点した最初の新しい世代のプレインズウォーカーです。

 テフェリーやカーンとの出会い、ジョイラへの淡い恋慕と苦い失恋、織り手の王や龍師範との対峙を経て魔道士としても大きく成長を遂げた彼は己の可能性を試すべく多元宇宙へ旅に出ました。やがて時は流れ、彼は故郷アーボーグに戻ってきました。そして、かつて謎めいた言葉を遺して久遠の闇の彼方へと去っていった師にして友であるカーンを探し求めるためなのでしょうか、次元航行船の研究を始めたのです。

 収集したガラクタを相手に日夜研究を続ける彼の工房に、ある日訪問者が現れました。それはウィンドグレイス卿亡き後にこの地を治めることとなった領主の徴税役人だったのです。無法の時代に育ったために納税というものを理解していなかったヴェンセールは、彼らを強盗と勘違いして徴税役人が訪ねてくるその度に追っ払いました。時には少々荒っぽい手段――例えば、忘却の彼方の目的地へと瞬間移動させたりなど――を取ることもありました。実際のところ、強盗と徴税役人の違いは犠牲者を武器によってさっさと殺すか貧窮によってじわじわ殺すか程度の違いしかありませんでしたが。

 困り果てたアーボーグ税務局は、近頃流行の「ピット」と呼ばれる闘技場で密かに囁かれる噂を耳にします。それは、多くの次元を股にかけたプレインズウォーカーの組織と関わりのある商業団体があるということ、そして時折ピットには他の次元からの者、つまり問題の男と同じくプレインズウォーカーがやって来ることもあるということでした。彼らは根気よく情報を集め、我慢強く機会を待ちました。行方不明の徴税役人が五人目になったある日、彼らはついにその組織との接触に成功したのです。彼らはとても年老いた大魔導師かドラゴンかそうでなければ恐ろしい何かを想像していたのですが、組織の代表は意外にも内気そうな少年とも言っていいほどの若い男でした。税務局長は代表にヴェンセールに滞納した税金を納付させるか、それが可能でなければ代わりに彼の製作したアーティファクトを差し押さえることを依頼しました。

 依頼を受けた組織の代表は、率直なところ困っていました。実はプレインズウォーカーの組織と噂されていてもそれは以前の話であって現状は組織と言えるものではなく、話を聞く限り相手のヴェンセールという男はかなり厄介そうな相手だったからです。そして彼はかつてプレインズウォーカーの工匠に仕えて虐待された経験もあって、同じ人種を相手にするのはあまり気が進みませんでした。しかし彼には「仕事は仕事」という信条があり、今までも何度もそういう厄介な相手を向こうに回して生きてきました。

 その日も工房に篭って何時ものように研究に勤しんでいたヴェンセールは、自分の心に何かが忍び寄り、探ってこようとするのを感じました。それは、彼に支払能力があるかどうかを調べようとした代表の魔法でした。代表の魔法は他人の記憶や心を読み、操る力だったのです。しかしヴェンセールにはその種の魔法に対してはかつての神にも等しかった頃のプレインズウォーカーにすら突破できない耐性がありました。精神のリンクを返すことによって精神魔道士の「強盗」を追い払うと、ヴェンセールはまた研究に戻りました。

 これらの出来事はいつしかアーボーグ当局にとって、《滞納者ヴェンセール》という一つの伝説となっていったのです。



 その後、組織の代表はその情報網にかかったある消息に目を留めます。それはミラディンという次元である二人のプレインズウォーカーが、ありふれたクリーチャー相手に不意打ちをして一瞬で破れたというものでした。その時、彼は真っ先にこう思ったのでした。

あの時まずはあいつにスフィンクスをけしかけてやればよかったんだ、と。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄○ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
           O 。
                 , ─ヽ
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|__|__|__|_   __((´∀`\ )< というお話だったのサ
|_|__|__|__ /ノへゝ/'''  )ヽ  \_________
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|_|_| 从.从从  | \__ ̄ ̄⊂|丿/
|__|| 从人人从. | /\__/::::::|||
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────────(~~ヽ::::::::::::|/        = 完 =

3 件のコメント:

  1. これはひどいwwwww

    ていうか最初の3段落がすごく率直にヴェンセールの人となりを説明できていて実にいい感じです。それだけに話の落差がナイスとしか言いようがありません。実にグッジョブです。

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  2. そうだったのか!

    隠されていたMTGの真の恐ろしさを垣間見たぜぇ

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  3. >あいしゃさん
    ありがとうございます><
    唐突に話のタイトルや頭からオチまで思いついてしまったので、やっちまった感満載でお届けしました。

    ヴェンセールくんはとってもいい人なんだけど空気読めないってイメージです。

    >あらーらさん
    多元宇宙はおそろいところや!
    情報の錯綜する今だからこそ出来る微妙なネタでお届けしました。

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