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2011/03/10

【MtG:PWコミック私家訳】Enter the Eldrazi Part 3

今回は第一部第二部の続きである

【Thank you Vol】Enter the Eldrazi, Part 3【あれ、テゼレット君いたんだ】

を訳出します。
あくまで英語力の低い筆者の勉強として訳してますので全くの誤訳や勘違いなども存在する可能性があります。もし見つけられた方はご教示くださると嬉しく思います。



p1 Enter the Eldrazi(エルドラージ現出) Part 3

p2
[Panel 1]
ボーラスの瞑想次元

サルカン「ご主人様の気配がない。もしあのお方がここにいらっしゃるなら……俺は今ごろは火の海の中だろう。俺は道しるべを置いておこう。あの方は望む時に俺を見つけ出されるだろう」

謎の声「それで己を釈明出来ておるとは言えぬな、ドラゴンの王子よ」

[Panel 2]
(小さなニコル・ボーラスの幻影が三体、サルカンの頭上に現れる)

小ニコルA「我らはことの詳細がもたらされることを望んでおる」

小ニコルB「お前の失策の詳細をだ。そして、我々はお前のはらわたを抜くだろう」

小ニコルC「いやいや、お前の助けが必要なのだよ。判っておる。我々がその話を一通りお前の小さな精神から剥ぎ取るのは判っておる」

[Panel 3]
(サルカンは幻影を杖で振り払う)

サルカン「あの方はここにおられる」

p3
[Panel 1]

謎の声「ヴォルよ、我はこれほどまでにお前が早く帰ってくるとは思ってはいなかったぞ」

サルカン「貴方様の仰るとおりに致しました。俺はウギンの目に到達しまして、そして、待っておりました」

謎の声「そして?」

[Panel 2]

「何週間もそこで難渋いたしました。石はまるで生きているかのごとく詠い、揺れ動いておりました。それには声が、もしくは魂がございました……」

[Panel 3]

サルカン「俺は毒虫を喰らってかろうじて生き延びて参りました。まさしく壁に囲まれ嘲られておりました。心は押し殺された囁き声で苛立たせられました…」

[Panel 4]

謎の声「では、今は何が聞こえておる?」

[Panel 5]

サルカン「何も。何も聞こえてないと思います。そこにあったようなものは全く聞こえておりません」

謎の声「城の天守へと来るがよい」

p4
[Panel 1]
(階段を登っていくサルカン)

謎の声「お前はウギンの目では一人のままではなかったろう」

サルカン「そこに篭りきりの間は一人でおりました」

謎の声「やがて、他のものが来た。何者だ?」

サルカン「俺が引きずり込んだ運の悪い侵入者どもでございます。それらは俺の私的な衛兵としていかめしく立たせておりました。彼らの血は灰色の床を彩りました」

謎の声「誰が自らの意思によって来たのだ?」

[Panel 2]

サルカン「貴方様は誰かがどのようにして来る事をご存知だったのですか?何故、俺に仰ってくださらなかったのです?」

謎の声「鎮まれ。誰が来たのだ?」

[Panel 3]

サルカン「ウギン自身が。父よ、彼は俺に話しかけてきました」

謎の声「ヴォルよ、それは迷妄だ」

[Panel 4]

サルカン「何故そうだとご存知なのです?」

謎の声「それは、我がウギンが何処に葬られたかを知っているからだ。我自身が奴をそうしたのだ。そう昔の話ではない」

[Panel 5]

謎の声「他には誰が?」

サルカン「紅蓮術士です。ただの小娘でございます」

謎の声「それと?」

[Panel 6]
(微妙な顔をするサルカン)

p5
[Panel 1]
(サルカンは通路の頂上までたどり着く)

サルカン「フードを被った陰気な若造でございます。恐らくは精神魔道士かと」

謎の声「そして、何が起こったのだ?」

サルカン「闘いが起こりました。あの空洞は俺にドラゴンの姿をとらせるままにしておきましたが、呪文は否認いたしておりました。そう、あの……」

謎の声「透明な炎、か」

[Panel 2]
(サルカンはドラゴンの翼を出して城の中央に向かって飛ぶ)

サルカン「小娘は光の無い炎を呼び出しました。『目』はそれを受け入れ、そして若造はその呪文を双つにしました」

[Panel 3]

サルカン「俺は……負かされました」

p6
[Panel 1]
(城内に入るサルカン)

謎の声「よろしい」

サルカン「よろしい?」

[Panel 2]
(中にはニコル・ボーラスが)

ボーラス「その小娘はウギンの幽霊火を導き出したのだ。そして今、『目』は開いた」

[Panel 3]

サルカン「いえ、まだです!目は未だいっぱいに開いているというわけではございません!」

[Panel 4]

ボーラス「言ってみよ」

[Panel 5]
(サルカンは面晶体のかけらを掲げる)

サルカン「このドラゴンの錠前には他の鍵もあります。ご覧ください!」

[Panel 6]

ボーラス「それは万が一の場合の備えだ。ウギンはそれによって我を妨げたようだ。貪るものどもは未だ解放されてはおらぬ」

p7
[Panel 1]

ボーラス「ありがとう、ヴォル。行ってもよいぞ」

サルカン「行くですと?俺はウギンの目の守備に失敗いたしました。お許しくださると?」

[Panel 2]

ボーラス「いや、ただ下がってもよいということだ。我は誰も『目』に入れぬようにするためにお前を遣わしたのではない。奴らを入れるために遣わしたのだ。お前はそこに二人のプレインズウォーカーが辿りついたのは偶然の一致だと思っておるのか?」

[Panel 3]

サルカン「貴方様は俺をそこで腐らせておくために寄越したと?無力な替え玉として?彼らが来る事をご存知だったのですか?」

[Panel 4]

ボーラス「小娘が来るのは判っておったが、もう一人は――我にとっては賭けだった」
[Panel 5]

サルカン「錠前はどうなのです?『目』はいっぱいに開かれるのでしょうか?」

[Panel 6]

ボーラス「我らは誰がウギンの呼び声に応えるのかを見るであろう。気楽にやれ、サルカン・ヴォルよ」

p8
[Panel 1]

ボーラス「我は手駒の面倒をみよう……」

[Panel 2]
(光の中、エーテリウムの腕を失ったテゼレットの体が浮遊している)

ボーラス「テゼレットが証を立てられるようにな」

(「エルドラージ現出」完。小説「Test of Metal」へ続く)


以上をもちまして、「Enter the Eldrazi」はこれで訳出終了となりました。
拙い訳をここまで読んでくださって本当にありがとうございます。


最初のサルカンの台詞に応えた妄想の声である「己を釈明出来ておる」は原文の「self-explanatory gift」をかなり強引に意訳しております。これは何かといいますと、「私はニューヨークを愛しています」「私はクィアーで、妊娠しています」など「自分を説明(self-explanatory)」しているメッセージが入った服や小物などのことのようです。サルカンの妄想も含めてボーラス先生は「failsafe(フェイルセーフ)」など、日本語にするには少々困る発言をしてくれます。

サルカンとボーラスのやりとりがなんとも言えません。さすがはボーラス先生、忠実な下僕の扱いを心得ております。しかし、ウギンの目警備員はかなり苦労する任務だったようですね。せめて食事くらい支給してやってください。

サルカンの口調を確認するために「白獅子の飛翔」第三部を読み返しますと、当時のサルカンのあまりのカッコよさに「どうしてこうなった」という感じですが、今のサルカンもこれはこれでまた違った魅力があると思います。ついついご主人様の前で弱音を吐いて愚痴っちゃうところですとか、狂気の中に垣間見える暗喩的な発言ですとか。

概ねボーラスはなんでもお見通しで計算どおりなのですが、三人のPWのうち最後の一人が来るかどうかは賭けだった、というのは意味深な発言です。これは「誰か来るかどうかはわからなかった」ことなのか「誰かが来るように画策はしていたが、本当に来るかどうかまでは判らなかった」ことなのか…「Awakenings」第三部でのジェイスの発言から考えるに恐らくは後者でしょうが。

「ジェイスはボーラスの勢力の一員なのか」という疑問をたまに見かけますが、こういう状況を見ますと、本人はそうだと意識せずにボーラスに荷担するはめになっているという構図が興味深いです。「下僕でも工作員でもないが、実質的には勢力の一員に数えられている」あたりが妥当でしょうか。

「求道者の転落」から姿を見せず、アラーラの断片ブロックのストーリーでも活躍をせず、「何をやってるんだ?」と疑問に思われていたテゼレットですが、ここに至ってようやく表舞台に復活です。《ボーラスの工作員、テゼレット》のキャラクター紹介を見ての通り、反逆したジェイスとの闘いに敗れてこの状態になってしまってました。

キャラクター紹介においてテゼレットはかつてジェイスに「強力な手駒(powerful pawn)となることを望んで」いたと書かれていますが、この話(公表は先ですが物語の時間軸では後)ではボーラスに「手駒(my pawns)」と呼ばれています。これは、かつてジェイスを「工作員(Agent)」にしていたテゼレットが、今では自分が「ボーラスの工作員(Agent of Bolas)」となっていることとも合わせた、なかなか皮肉のきいた言葉選びなのではないでしょうか。

最後のボーラスの台詞は原語では「As Tezzeret can attest.」、つまりテゼレットのこれから先の物語が「Test of Metal」に続く事を「attest」と「at test」の引っ掛けによって示しているのではないかと思われます(穿ちすぎかもしれませんが)。
第二部にてサルカンが洞窟に並んだ面晶体の事を「Teeth(歯)」と表現していることが「Teeth of Akoum(アクームの歯)」という地名と同時にゼンディカー・ブロック小説のタイトルをも示していますので、同じ手法ではないかと。

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